「はっやっまサーン」
勢いよくドアを開けて温室の中へと足を進める。
胸に入り込んでくる花の香り。
土と、草と少し熱気のこもった温室独特の空気。

「あれ?もう帰っちゃったんすか?」
人のいる気配がない。
「ちぇ、残念〜。」
温室の奥にあるテーブルセットのウッドチェアーの上。
リンリンが丸くなっている。

「リンリン〜」
声をかけるとビクッと体を起こして椅子から飛び降りた。

うーん。
まだ懐いてはくれないわけね?

猫は好き。

気まぐれで我が儘で、でも寂しがり屋。

甘えてくるときの猫はめちゃくちゃかわいい。

黒猫を不吉だとは思わない。

特にリンリンは。

「リンリン。」
しゃがみ込んで手を伸ばす。
じーっと俺の顔を見ていたリンリンが寄ってきた。

おや?

すりっと指先に頬ずり。

めちゃくちゃかわええーー!!

でも、すぐにぴたっと止まって俺の顔を見る。

笑った気がした。

リンリンはパッとどこかへ走っていった。

うわ。ほんとにそっくり。

想像したリンリンの笑顔がアラタさんと重なった。
俺の大事な大事なアラタさん。
目を細めて、口の端だけを動かす。

我が儘で気まぐれで、それに意地っ張り。
誘うだけ誘ってすぐにはぐらかす。

でも、寂しがり屋。

誰にも懐かず、高嶺の花。

首輪の鈴がリンリンと鳴るからリンリン。

カタカナより漢字の方がぴったりだと思うんだ。

「凛」の文字。

アラタさんのイメージと重なる。

大橋先生にしか懐かないリンリン。

おれ・・・リンリンにとっての大橋先生のように
アラタさんの、唯一懐く存在になりたいな。

でもホントはさ、一生懸命隠してるけど
行動は全然そんな風に見えないんだけどさ。
アラタさんが俺に甘えてくれてる時があるのおれ、知ってるんだ。

アラタさん。おれ、自惚れててもいい?

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絶対真行寺は猫とアラタさんを重ねてると・・・
猫と戯れる真行寺って結構、萌だったりしますね(><)