秋風2 −夢の途中−





棒倒しは見事に紅組の圧勝だった。
アラタさんのご褒美のために気合いが入っていたのか
開始早々、一気にダッシュで体当たりをかましたおかげか
さほどの抵抗もなく勝利を収めることが出来た。

騎馬戦は勝利で100点。ハチマキ1本につき10点ボーナスの計算。
制限時間後に残っている騎馬が所有しているハチマキが対象になる。
なぜそんなややこしい計算をするかというと
ハチマキに付加価値をつけないと、体当たりで騎馬を崩す作戦が
横行するからだとか。
とりあえず取りまくるしかない。いろいろ計算もあるけれどなぜか俺は騎手になった・・・がたいでかいんだよ?俺。

重量級騎馬を作るんだそうな。
馬になるよりは楽しいだろうけど・・・つぶされる前に潰れたりして(笑)
アラタさんも騎馬戦出るって言ってたけど・・・
まぁ、アラタさんなら大丈夫だよね。
みんな手荒い真似はしないだろうし。

そんなこんなで開始の笛が響く。
一斉に中央へと走り出す。
1分もしないうちに乱戦になる。
すでに1/4はハチマキを取られたり崩れたりで戦線離脱。
あちこちで激しい攻防が繰り広げられる。

「真行寺!その首もらったぁぁ!!!」
「返り討ちにしてくれるわっ!」
3本目のハチマキを取るために相手へと腕を伸ばす。
激しい攻防の末、何とかハチマキを取ることが出来た。
重量級のせいか、安定はいい。
その後も夢中でハチマキをとり続けた。
15分の制限時間も残り3分グラウンドに残っているのは
激戦を重ねた猛者達。やや紅組が押している。
おれも6本のハチマキを手にただいま7本目と激戦中。

「しぶといな、真行寺!」
「そっちこそ」
組み手のままにらみ合う。
「大人しくはちまきをよこせ。」
「やなこったい。」

「あ、三洲先輩。」

「え?」
「もらったぁぁ!!」
「そうはいくか!」
バレバレの作戦を逆手に取って、相手の片手を引いてバランスを崩す。
そのままその手を振りきってハチマキを奪った。
敵はバランスを崩したせいかドタッと転がった。
「へへん!勝利!」
これみよがしにハチマキを見せつける。
どうやらこのまま紅の勝ちでいけそうだった。
「うっし。こうなったら8本目もねらうぞ!」
「おう!」
体育会系の人間で固められた騎馬は体力も根性も有り余っていた。

「ひゃぁ。すごいなぁあの1年。」
3年の前期生徒会長、広田透が驚きの声を上げる。
「あれお前に猛烈アタックしてる奴だろう?三洲。」
「お前、煽ったろう?」
含みのある言い方で奈良先輩がいった。
「さぁ、何のことですか?」
にこりと涼しい顔で答える。
「ホント、食えない奴だな。」
そう笑う奈良先輩に広田先輩は「なに?何の話??」と困り顔。

「約束。忘れないでくださいよ、先輩方。」
俺は話を逸らすように話題を変えた。
「お前もな!ぜーったい白で決まりだ。」
「日替わり30食分は俺が頂きます。」
得意そうに胸を張る先輩にそう答える。
「お、1年終わったみたいだな。残念、紅だ。」
グラウンドに目を抜けたまま奈良先輩は呟く。

「それじゃ、俺は戻ります。次ですから。」
「ああ、けがしない程度に頑張ってこい。」
「頑張らなくて良いぞーーー三洲ーー。」
そう叫んだ広田先輩の目は本気だった。



結果は1320対1350で紅の優勝。
接戦続きでみんなへとへとになっていた。
いつもよりは短い校長の話も終わり、閉会式は幕を閉じた。
寮へと戻る興奮さめやらぬ人混みの中を流れとは逆に向かう。
設備の撤収もお声がかかってしまったたから。
今日は昨日よりも早く解放されるだろうとは思うけど
少しでもアラタさんの役に立ちたいとか側にいたいとかそういう下心もあったりして。

張られたテントも旗も、応援席用のシートも片づけられて
いつも通りのグラウンド。
真新しかった白線もほとんどかすれてしまっている。
祭りの後の寂しさ。
明日からまた、いつのも生活が始まる。

照明が落とされたグラウンドを昨日と同じように
人の流れに沿って歩く。
みんなの足取りは重い。俺も例外じゃなかった。
ふと、腕を捕まれて流れとは逆に連れて行かれる。

昨日と同じ。

行き着いた先は正門近くの噴水。これも昨日と同じ。

ベンチに隣り合わせでアラタさんと座る。
「ほら、真行寺。」
差し出されたポカリスエット。
「あ、ありがとうございまス。」
「今日は大活躍だったな。」
にこっと微笑まれる。

くらり。
アラタさんが俺に差し入れくれた上に笑ってくれるし。

「全部1位と思ったんスけどね・・・団体競技はむずかしいっス。」
「まぁ、上出来だよ。」
「で、何だったんですか?アラタさんのことだから
「俺の勇姿が見たかった」なんて事はないっスよね?」
そういって不審そうな目でアラタさんを見る。
「さてね。」
アラタさんはクスリと笑ってごまかした。
「ちぇっ。頑張ったのになぁ。」
それ以上追求せずに引き下がる。
アラタさんの様子から、とりあえず役に立ったんだろうと判断したから。

「そうふてくされるなよ。ちゃんとご褒美はやるよ。」
次の瞬間、ふわりと風を感じて、頬に柔らかい感触。
「あ、アラタさん・・!」
抱きつこうとした俺は
アラタさんが立ち上がったために、そのままベンチに倒れた。

「今日はお前も疲れてるだろうし
俺もちょっと休みたいから明日時間をあけておくよ。」
見上げると不適そうに笑ってアラタさんは言った。

「う・・・はい。」
倒れ込んだままアラタさんを見上げる。
「間抜けた顔して・・・」
おかしそうにアラタさんは笑って、校舎の方に消えていった。
一人、アラタさんのぬくもりが残るベンチに横になりながら
俺はずっと、見えなくなるまで後ろ姿を見送っていた。

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と言うわけでまた続きます(´Д`;

なにげに奈良先輩と広田先輩を出してみました(笑)
奈良先輩も好きです(><)

次で完結なのですがえと・・・エロ・・・頑張りました・・・・
もちっとまってください・・・・・