ここから先は裏的要素を含みます。
苦手な方はご遠慮ください。


■読む■






























秋風3 −夢の途中−




消灯後の寮の屋上。
霞のような薄い雲が星空を覆う。
少し欠けた月が雲のベールに隠されてぼんやりと光っていた。
夜半の風はもう冷たく、頬をさわる風は眠い頭を醒ましてくれた。

「アーラータさーーーん。」

ぼそりとつぶやく。されど返る言葉は無し。
俺、ちょっと寂しい。ぐすん。
約束していた時間から15分。遅れるのはいつものことだけどね。
足を投げ出したまま壁にもたれて目を閉じる。
気を抜くとそのまま眠ってしまいそうになる。
前日の体育祭の疲れは、完全には抜けきっていなかったけど
そのせいじゃなくて、静寂と時折聞こえる風が枝を揺らす音とか
そんなのが耳に心地よくて・・・

微かに足音が聞こえた。
ゆっくりと階段を上ってくる足音。きっとアラタさんだ。
こんな時間にくるのはアラタさんしかいないだろうけど
俺、足音でもわかるんだ。歩き方の癖って人によって違うじゃない?
前にそういったら「ホントにお前は犬だな。」って馬鹿にされたけど。
カチャッとドアが開く。

「アラタさん、おっそーい。俺のこと凍死させる気?」
「それもいいな。静かになって万々歳だ。」
不適にほほえんで俺の隣に腰を降ろす。
「ひでぇ〜」
こんなやりとりも慣れたもの。
俺にだけはキツイ態度のアラタさん。
誰もこんなアラタさんは知らない。ちょっとした優越感。

「アラタさん、寒くない?」
「ん?そうだな。そろそろ屋上って言うのも考えなきゃな」
「これ着ていいよ。少しは暖かいし。」
俺は着ていたパーカーを脱いでアラタさんに渡そうとした。
「別にいい。」
アラタさんはそういって俺の腕をつかんで言った。
「え、でも風邪引い・・・・」
突然遮られた言葉。
「アラタさん・・・?」
「お前が暖めてくれればいい。」
誘うような微笑みにノックアウト。
「・・・了解ッス。」
再び重なる唇。今度はしっかりとお互いを感じながら・・・



体をおこしたまま、耳元から首筋、うなじ、胸元へと唇を落としていく。
時折漏れるアラタさんの甘い息が俺の心を満たしていく。
ずっとこのまま時間が止まってしまえばいいのに。
アラタさんと二人だけの時間。
ぐいっと横に腕を引かれて倒れ込む。
「え?」
「ご褒美あげないとな。」
にやりと夜空を背にアラタさんは笑った。
アラタさんの少し冷えた手と柔らかい唇の感触がおれの身体を滑っていく。
慣れない感覚に俺はしっかりと反応する。

「元気だな、オマエは。」
クスリと笑うと同時に濡れた舌の感触。
「あっ・・・アラタさん・・・」
ふと、目があう。
前髪の隙間からのぞく切れ長の目。
心臓がドキリと鳴った。
あわててぎゅっと目をつぶる。
クスクスとアラタさんの小さな笑いが聞こえる。

すっっっげええエロいよ、アラタさん!
もう、最高のご褒美!

普段「して」って言ってもなかなかしてくれないアラタさん。
自分からしてくれた事なんか今までになかったのに。
「アラタさん・・・めちゃうま・・・」
絶妙な動きに息が上がる。
痺れるような快楽におぼれそうになる。
「・・・も・・・・・良すぎ・・・」
滅多にないことだからたっぷり楽しみたかったけど
慣れないせいか抑えが効かない。
包まれた柔らかい壁の感触。
静まりかえった空間に響くアラタさんの吐息と濡れた音。

「ん・・・も・・・だめ・・・イキそ・・・」
俺の声が聞こえたのかアラタさんは動きを早める。
ちらりと盗み見れば、俺をイかそうと一生懸命なアラタさん。
うわ・・・ほんと限界・・・
「っっん!」
開放感と心地よいけだるさ。
「・・・アラタ・・・さん。」
アラタさんは口の中のモノをこくんと飲み干すと軽くむせた。
「オマエ・・・勢いありすぎ・・・」
目尻にうっすら涙を浮かべて睨み付けながらつぶやく。
俺はそんなアラタさんがたまらなく愛おしくてぎゅっと抱き寄せた。

「アラタさん・・・」
「真行寺、苦しいぞ。」
「あ、はい、すんません。」条件反射。
俺はあわてて腕の力を緩めた。
「・・・オマエは・・・・」
急にアラタさんはくすくすと笑い始めた。
「真行寺。お前だけ満足して終わりか?」
「まさか。俺、出されたものは最後までちゃんと食べる主義ッス。」
「出されたもの・・・ね。」
本当にこの人は誘うのがうまい。
しかも分かっててそれをやるからたまらないよな・・・・
3度目のキスは・・・なんだか苦い味がした・・・。


「お前、少しは手加減しろよ。」
「すんません・・・」
シュンとうなだれる真行寺。
前日の疲れはまだ抜けきっていないだろうによくもまぁ、あれだけ出来るもんだ。
「ほら。早く服着ろよ。汗が冷える。」
重い身体を動かしながらシャツのボタンを留めていく。
しばらくは歩けそうにない。
「アラタさん、これ着てください。」
真行寺はそう言って、俺にパーカーを渡した。
「俺、身体丈夫だし平気だけど、アラタさん風邪なんか引いたら大変でしょ?」

その笑顔がなんだか嬉しくて・・・

「そうだな。俺は誰かと違って忙しい身だからな。」
そのまま真行寺の手からパーカーを奪う。
「ありがとうの一言くらいほしーよなぁ」
すねる真行寺。
「当然のことだろう?なぜ礼を言う必要がある。」
「くぅ〜抱いてるときのアラタさんは素直なのにな・・・」
「うるさいよ、お前」ボカッと蹴りつける。
「うわ、凶暴!」そう呟いて蹴られた脚をさする。

素直になれたら・・・楽なんだろうか?
この屈折した感情をまっすぐにお前に向ける日が来るんだろうか・・・
少し寒さを感じて羽織ったパーカーにくるまる。
ふわりと真行寺の匂い。
まるで、抱きしめられているようで・・・
「アラタさん?寒いの?」
心配げに俺をのぞき込む真行寺その腕の中に、もう一度抱きしめられたかった。
「もう返ろうか?マジで風邪引いたら洒落になんないっしょ?」
「もうしばらくここにいる。・・・返りたくてもうまく歩けない。」
「あ・・・じゃ、こうしよう。」

真行寺は俺の腕を引くと後ろから俺を抱きすくめた。
「これなら少しは暖かいでしょ?」
「・・・すこしな・・・」
素直に「そうだな」と言えればいいのに・・・
「あ、アラタさん。月が出てきた。」
真行寺が指さした上には雲の切れ間から顔を覗かせた月。
「・・・・・・・」

真行寺・・・帰りたくない本当の理由を言ったらお前は笑うか?

「すげーキレイ。」
「・・・そうだな」
「アラタさんもすげーキレイ。」
耳のすぐ側で聞こえる低く小さな声。
「アラタさん、大好き。」
「ウルサイ。」
「愛してる。」
「却下。」

いつものやりとり。
最近の俺は本当にどうかしてる。
こんなゆっくりとした時間がずっと続けばいいのになんて
俺らしくないことを考えている。

「・・・帰る。」
「うん。わかった。」
「・・・腕、離せ。」
「力入れてないよ?」
「いいから離せ。」
「自分でほどきなよ。」

淡い月光に照らされながら
そんなやりとりをしばらく続けていた・・・・





「あ、アラタさん!」
学食へ向かう途中。アラタさんを発見!
うきうきと飛んでいく。
「こんにちわ。アラタさん。」
「はい、こんにちわ。」
鬱陶しそうなアラタさんの表情。
でも俺はホンキで嫌がってるわけじゃないのを知ってる。
「大路。先に行っててくれないか?」
アラタさんは隣にいた大路先輩に声をかける。
「え?・・・判った。席取っておくよ。」
「すまない。たのむよ。」

大路先輩(その他取り巻き含む)は怪訝そうに俺を見て学食に歩いていった。
「アラタさん、いいの?」
少し心配になりながら尋ねてみる。
「なにが?」
「なにがって・・・」
一応内緒な間柄で、表向き(実際も?)にはまとわりつく後輩とそれをあしらう先輩
という生活を送っている訳だし。
「この間のご褒美の残りを忘れてたよ。」
困惑していた俺を無視してさらりと言う。
「残り?」

あれだけで十分すぎるほど頂いた気もするんですけど・・・?

アラタさんは制服の内ポケットから小さな紙切れを出した。
「はい。進呈。」
アラタさんから渡された紙切れに目を落とす。
「食券??日替わりの・・・。」
俺の手の中には日替わり定食の食券が3枚。
「真行寺にも手にする資格が有ると思うからね」
「まさか・・・・・」

まさか・・・俺にあんな事言ったのって・・・

「アラタさん・・・何枚ゲットしたの?」
「さて。」
「俺、聞く権利はあると思うんだけどな。」
そう言った俺にアラタさんは指を三本立てて笑った。
「ごちそうさま。真行寺。」

3ってことは3枚?いや。30枚だな?そんなに!?

手をひらひらさせて学食へと歩いていくアラタさん。
「ずっけー。せめてもう2枚はちょうだいよ!さすがに3枚は少なすぎ!」
慌てて後を追いかける。
「真行寺くん。廊下は静かにね。」
不適に微笑む姿にそれ以上の交渉は無駄だと悟る。

「ひで〜」
立ち去る後ろ姿を恨めしい目で見つめる。
ホント俺ってあの人にいいように使われてるのな・・・
寂しく廊下にたたずむ俺に友人達がからかいの声をかける。
「なんだ真行寺。また三洲先輩に玉砕か?」
「うーるーさーーーい。」
憂さ晴らしといわんばかりにラリットをかましてやる。
「お、やるのかぁ?」
賑やかにじゃれあいがはじまる。

どんな扱いされても、おれ、アラタさんがすきっス・・・



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

初のエッチシーンでしたが・・・・微妙に真行寺受?(爆)

屋上でラブラブデート・・・・はふぅん(*´Д`*